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審判委員

ビデオ検証の対象プレイと導入への歩み

審判委員と学ぶ高校野球特別規則④

今夏、阪神甲子園球場で行われる第108回全国高校野球選手権大会から、高校野球の全国大会でビデオ検証を採用することになりました。今後、選抜大会、明治神宮大会でも実施します。

デジタル技術の発達や映像機器の進歩に伴い、スポーツ界ではサッカーのVAR(ビデオアシスタントレフェリー)など、映像を使った判定の検証が急速に広がっています。野球界ではメジャーリーグが2014年に「チャレンジ」制度を取り入れ、日本のプロ野球では2018年に「リクエスト」制度を採用しました。アマチュアの社会人野球や大学野球でも導入が進んでいます。ただ、それぞれの団体によって、検証の方法やルールは少し異なります。高校野球ではどのように実施するのか、紹介していきます。

検証は9イニングスで1回

日本高校野球連盟は2026年4月の理事会で、「大学及び高校野球におけるビデオ検証に関する特別規則」を承認しました。高校野球では、この規則に基づいてビデオ検証を実施していきます。

試合中、各チームは「ビデオ検証の対象となる判定」について、ビデオ検証を求めることができます。ビデオ検証の対象となるプレイ、また、対象外の主なプレイは以下の通りです。

検証の対象となるプレイ 検証の対象外の主なプレイ
打者・走者・投球に関するプレイ
  • ・ホームランまたはエンタイトルツーベースの可能性がある打球
  • ・フォースプレイ
  • ・タッグプレイ
  • ・投球判定(ストライク・ボール)
  • ・反則投球
  • ・ハーフスイング
キャッチまたはノーキャッチ
  • ・外野手のプレイ
  • ・内野手が外野方向に背走し、
    外野で行ったプレイ
  • ・内野手のファウルフライ
  • ・ファウルチップ
  • ・自打球
    (ファウルと判定した打球)
  • ・ボーク
  • ・反則打球
フェアまたはファウル 一塁塁審または三塁塁審の位置より後方に落ちた打球のみ適用
  • ・故意落球
  • ・インフィールドフライ
走者に関するプレイ
  • ・追い越し
  • ・塁の空過
  • ・タッグアップにおけるリタッチ
  • ・タイムプレイ
  • ・打撃妨害
  • ・走塁妨害
    (野球規則6.01(i)(j)は含まない)
  • ・守備妨害
    (野球規則6.01(i)(j)は含まない)
  • ・塁審より前方の打球(フェア地域)
ヒットバイピッチ 打者に投球が当たる 走者に打球が当たる
タッチ・接触に関するプレイ スイングした打者(着衣含む)に投球が当たる
  • ・ラインアウト
  • ・フィジカルアシスト
アマチュア内規⑨
危険防止ルールに関するプレイ
  • ・本塁での衝突プレイ
  • ・併殺を試みる塁へのスライディング
 

例えばストライク・ボールの判定や、対象となっていないプレイのアウト・セーフの判定などについてはビデオ検証を求めることはできません。

各チームが検証を求めることができるのは、9イニングスで1回です。延長に入った場合は、それまでの回数に関わらず、1回のビデオ検証を求めることができます。

ビデオ検証の結果、判定が変わった場合は1回に数えません。ただし、2026年の第108回全国高校野球選手権大会については、判定が変わった場合は9イニングのうち、あと1回に限りビデオ検証を求めることができるとしています。

具体的な運用は「ビデオ検証に関するオペレーションマニュアル」に従って行います。

ビデオ検証を求める場合、プレイが一段落した後、速やかに「伝令」を出して球審に申し出ます。球審はそのプレイが「ビデオ検証の対象となる判定」であることなどを確認したうえで、ネット裏の検証担当(審判幹事)にビデオ検証の実施を伝えます。これを受け、場内アナウンスするとともに、スコアボードでも「ビデオ検証」と知らせます。

ビデオ映像を確認するのは、ネット裏で控えている審判幹事と控え審判2名の計3名で、球審らグラウンドの審判は立ち会いません。3名で当該プレイの映像を確認後、審判幹事が球審に結果を伝え、球審がマイクで場内に説明します。試合時間の遅延を防ぐため、検証に要する時間を2分以内とし、確証が得られない場合は、判定通りとなります。

ビデオ検証実施を伝える球審
「より正しい判定を選手に返す」

日本高校野球連盟では、技術・振興委員会などでビデオ検証導入について意見が出たことを受け、2024年9月に審判規則委員を中心としたビデオ検証に関するワーキンググループを発足させました。先行していたプロ野球や社会人野球の事例も参考にしながら、導入する場合の具体的運用や試合時間を遅延させないための判定時間など課題を個別に検討しました。

同年11月の審判規則委員会でワーキンググループでの討議内容をもとに特別規則案をまとめ、翌月の日本高野連理事会で中間報告。7イニング制等高校野球の諸課題検討会議での議論も経て、実務的な課題を協議した後、理事会承認へと手続きを進めました。

高校野球の審判は、「都道府県大会の初戦に高校野球の原点があり、初戦で敗れる半数の参加校のために」という思いでグラウンドに立っています。高校野球の心は、甲子園だけでなく、全国各地で行われる都道府県大会の1試合1試合にあります。それゆえに、甲子園など全国大会のみでビデオ検証を実施することには、反対意見もありました。

ただ、全国すべての試合会場でビデオ検証を行うことは、設備や運営体制上、難しいのが現状です。一方で、デジタルテクノロジーの進化は目覚ましいものがあります。時代の変化に合わせて、まずは実施が可能である全国大会において、選手たちにより正しい判定を返していくということが最善である、という結論に至りました。

ビデオ検証は、審判の判定に代わるものではありません。映像を活用しつつも、最終的に判定を下すのは審判です。私たち審判は、常に正しい判定をしたいという思いでグラウンドに立っています。ビデオ検証の導入後も、その思いは何も変わりません。むしろ、デジタルテクノロジーを有効に活用しながら、より正しい判定を追求する意識が一層増せばと思っています。

審判の判定の精度を高めるための手段が増えただけで、審判の本質的な役割はこれからも変わりません。試合を公正に運営し、責任を持って判定することが私たち審判の使命です。

甲子園で練習会を実施
ビデオ検証の練習をする審判委員ら

実施を前に、2026年6月28日、「ビデオ検証オペレーション練習会」を阪神甲子園球場で行いました。審判委員32人が参加し、関西学院大野球部員の協力を得て、ビデオ検証の運用を本番通りに確認しました。

ノック形式でプレイしてもらい、ベンチから送られた伝令がビデオ検証を求めると、審判委員4人はマウンド付近に集合。球審がジェスチャーで検証の実施をネット裏に伝えると、スコアボードに「ビデオ検証」の文字が浮かび上がり、同時に、「ただいまからビデオ検証を行います」というアナウンスが流れ、プレイの映像がスコアボードにも映されました。

ビデオ検証の練習で、ネット裏と連絡を取る球審

ネット裏では、実際にプレイを撮影したビデオ映像で判定について確認し、その結果をネット裏とグラウンドをつなぐ受話器で伝達。最終的に球審がマイクを使って「判定通りアウトとします」と説明し、プレイが再開されました。

経験を積むため、審判委員はグラウンド上でのジャッジや、ネット裏の業務を交代で務めました。所要時間を計測し、できるだけスムーズに行えるよう調整。複数の映像を比較しながら最適な映像をどう選ぶかなど試行錯誤を繰り返しました。また、一連のプレイで複数の「ビデオ検証の対象になる判定」があった場合、それぞれ当該判定の場所を指さして示すなど、よりわかりやすくするようオペレーションの改善なども行いました。

研修会の内容をもとにさらなる準備を進め、8月5日の開幕を迎えます。

ビデオ検証練習会で、検証中の映像が流れるスコアボード

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