インタビュー

2026年8月20日

スピード感と一体感で世界に挑む

U-18日本代表 岡田龍生監督

アジア選手権(9月・台湾)で初采配

第14回BFA U18(18歳以下)アジア選手権が、今年9月に台湾で開催されます。2016年以来となる3大会ぶり6回目の優勝を狙う高校日本代表を率いるのは、岡田龍生(たつお)監督=兵庫・東洋大姫路監督=です。大阪・履正社の監督として2019年に全国選手権大会を制した経験も持つ岡田監督に、日本代表に対しての思いやチーム作りのポイントを聞きました。

プレッシャーとやりがい

――高校日本代表の監督に初めて就任しました。率直に、日本代表に対しての思いを聞かせてください。

国際交流試合としては、昨年は兵庫県選抜チームのチーフコーチとして、台湾遠征に同行しました。履正社の監督時代には大阪府選抜の監督として、オーストラリア遠征に参加したこともあります。しかし、選手時代を含めて日の丸を背負って戦ったことはこれまで一度もなく、憧れもありました。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)やオリンピックに出場した教え子からは、日本代表には非常にプレッシャーがあるとも聞きました。色々と悩みはしましたが、本当にやりがいのあるポジションだと感じ、お引き受けすることにしました。

――昨年、沖縄で開催されたU-18の第32回ワールドカップ(W杯)で、日本は米国に敗れて準優勝に終わりました。タイブレークの末に勝利した2次リーグの米国戦で、岡田監督は解説を務めました。

米国は、今回は絶対に優勝するという意気込みがあったと後々、聞きました。レベルの高い選手が集まっていて、投手は球が速いし、コントロールも良かったです。海外勢に体格やパワーで勝つことはできません。日本は9試合して本塁打は神村学園の今岡拓夢選手(プロ野球・西武)の1本のみでした。日本らしい細かい野球というものも生かしていかないと勝てないなということを実感しました。

新体制への引き継ぎを図った高校日本代表の小倉全由前監督(右)と岡田監督=2025年12月(毎日新聞社提供)

――昨年まで高校日本代表を率いていた小倉全由(まさよし)監督からは、課題などが共有されましたか。

小倉監督だけでなく、第31回W杯の監督を務めた馬淵史郎監督=高知・明徳義塾監督=にも話を伺いました。2人が口を揃えて言われたのは、投球数制限の厳しさです。コントロールがよくない投手は球数がどんどん増えていき、試合中に継投について監督一人で考えるのは大変だと教えられました。

今回は、ベンチとブルペンの橋渡しや私のトータル的なサポートを新納弘治ヘッドコーチ=大阪・関大北陽前監督=に、投手は平川敦コーチ=北海道・北海監督=、野手は川崎絢平コーチ=大分・明豊監督=にお願いして、役割分担を図ります。

プロ野球は見ないけど、高校野球を見るという人は大勢います。それはなぜかと言うと、守備に就くときの全力疾走など、一生懸命だからです。その姿は日本の高校野球のいいところですし、歴代の監督も大切にしてきたことだと思うので、継続していきたいです。

実戦形式で選手を見極め

――4月には2泊3日の日程で全国から41人が参加して、高校日本代表候補選手の強化合宿を行いました。手応えはいかがでしたか。

私からコーチに提案し、実戦形式の練習を増やしました。フリー打撃では打ちやすい球を投げてもらえるので、パワーのある選手はボールを遠くに飛ばすことができます。でも、実際の投手に対しての対応力がどれだけあるかは分かりません。

また、足が速い選手でも判断力の有無や、足が遅い選手でも走塁のセンスがあるかどうかは実戦でないと分かりません。全体的に足の速い選手は目立っていましたし、投手、捕手のレベルは高いと感じました。

U-18高校日本代表候補選手による強化合宿でノックを打つ岡田監督=2026年4月

――アジア選手権に向けては、短期間でのチーム作りが必要となります。重視する点は。

いち早く、みんなを同じベクトルに向けることが大切だと思います。全員が違う野球を3年間やってきていますが、一旦リセットしてほしいです。私たち指導者の考え方に沿って、高校日本代表のチームとして、同じ方向に向かって頑張ろうという意識を持ってほしいです。

会社組織と一緒で、社長がいて管理職もいます。管理職の考え方がバラバラなら、社員はもっとバラバラになってしまいます。スタッフも含めて「チーム岡田」になってもらう。その考え方が、チームが一番まとまりやすいと考えています。

私のやりたい野球を浸透するためには主将も重要になります。4月の合宿では奈良・智弁学園の角谷哲人捕手に主将を務めてもらいましたが、コミュニケーション能力の高い選手を主将に指名することになると思います。

状態のいい選手から起用

――戦術面ではどのような戦い方を理想としますか。

投手も野手も状態のいい選手から起用しないといけないと思っています。7イニング制なので、先取点が大切になるからです。打者も3打席回ってくるとは限らないので、打てる打者から順番に1番から並べることも考えていかないといけません。

スモールベースボールに徹して、四球、盗塁、犠打、犠飛など、ノーヒットでも点数が取れる野球もしたいです。守備面ではバントシフトなども徹底したいので、大会前の合宿ではシートノックよりも、走者を付けての実戦的なノックをしたいです。

――その中で岡田ジャパンとしてのチームカラーは。

バットスイングの速さ、投手の球速など、いろんな面でスピード感を大切にしていきたいです。スピード感というと足が速いとかのイメージがあると思いますが、決してそうではありません。攻守交代の全力疾走や、ベンチに戻った後、体を休めつつ頭ではすぐに攻撃について考えることが重要です。試合の中でオンとオフのメリハリをしっかりと持ってほしいと思っています。

U-18高校日本代表候補選手による強化合宿で選手に話をする岡田監督=2026年4月(毎日新聞社提供)

――選手選考に関してはどのような方針で臨みますか。

ノーヒットで点数を取るために、小技が使える選手は必要です。投手の人数は増えると思いますが、ベンチ入り選手が18人になるので、投手以外にも他のポジションを兼ねることができる「二刀流」の選手はピックアップすることになります。けがなどに備えて捕手も3人は必要だと感じています。

選手との対話に時間をかけ
第97回選抜大会に出場し、甲子園練習でノックを打つ東洋大姫路の岡田監督=2025年3月(毎日新聞社提供)

――履正社の監督に就任してから今年で40年目を迎えます。履正社、東洋大姫路で春夏計16回の甲子園出場を果たし、全国制覇も成し遂げました。指導者として大切にしてきたことは。

プロ野球にドラフト1位で指名された選手もいましましたが、一人が目立つチームではなく、スタンドにいる選手も含めてみんなが同じ方向を向いているような野球をしたいと考えてきました。選手の方がチームメートのことをよく分かっています。そのため、履正社時代から、選手間投票でメンバーを決めるようにしています。選手は技術だけではなく人間性も評価するようになります。

ただ、選手の気質も昔と今では変わってきています。例えば、今の選手はベンチ入りメンバーに選ばれたら頑張るが、メンバーから外れたら頑張ることをしない。昔は抜かれたら抜き返してやろうという競争があったと思います。今はなかなか競争をすることができません。また、全体ミーティングで私が厳しい言葉を発しても、自分のこととして捉えられない選手が多いので、連絡事項のみにしています。そして、1対1で個人的に対話する時間を増やしています。

――東洋大姫路の監督を務めながら高校日本代表監督を兼務することに、難しさはありますか。

そうですね。でも履正社の時からですが、生徒が自分らで行動できるようになることを目標にやってきました。監督がいるからちゃんとやる、いないからできないというのは、一番ダメだと思っています。私がチームにいない期間があることで、東洋大姫路の選手も自覚を持ち、チームがレベルアップするのではないかなと感じています。チームのことを考えても、日本代表の監督はプラスになると思っています。

第91回選抜大会出場を決め、胴上げされる履正社時代の岡田監督=2019年1月(毎日新聞社提供)

――最後にアジア選手権の目標を教えてください。

現状は楽しみ半分、不安半分ですが、手も足も出ないチームはないと思っています。今年はアジア選手権で優勝を目指して、来年は(W杯で)世界一を目指すことを、2年かけて達成したいです。

岡田 龍生(おかだ・たつお)
1961年生まれ。大阪府出身。
東洋大姫路では3年時に主将・内野手として選抜に出場し4強入り。
日体大、鷺宮製作所でもプレーし、大阪・桜宮で2年間コーチを務めた後、1987年に履正社の監督に就任。2019年夏に全国制覇を果たした。

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