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第98回選抜高校野球大会 キャプテントークを実施

「高校野球で身につけた心・技・体」をテーマにグループ討議

第98回選抜高校野球大会に出場する32校の主将による懇談会「キャプテントーク」を2026年3月5日、大阪市北区の毎日新聞オーバルホールで開催しました。

従来は主将32人全員が同じテーブルを囲み、司会者の質問に一人ずつ答える方式をとっていましたが、今回からグループ討論の方式に変更。4人ずつの8班に分かれ、「高校野球で身につけた心・技・体」をテーマに議論し、班ごとに発表しました。

意見交換や議論を活発にするためにファシリテーター(進行役)を初めておき、スポーツ心理学が専門で大阪体育大学教授の土屋裕睦(ひろのぶ)さんが務めました。

グループ討論方式となったキャプテントーク(写真はいずれも2026年3月5日撮影、大阪市北区の毎日新聞オーバルホール)
1996年から抽選会前日に開催

キャプテントークは1996年の第68回大会から始まり、出場校の主将に交流を深めてもらおうと、組み合わせ抽選会の前に実施しています。

主将たちは毎年、事前のアンケートに回答を寄せます。昨年までは、「主将として苦労していること」「主将の選び方」「自慢できるチームの特徴」「ユニークな練習方法」「休みの過ごし方」「今大会の優勝候補」などの項目ごとに、司会者が複数の主将に尋ね、答えてもらう方法で進めていました。

今回からは、一人ひとりが発言する機会を増やし、主将同士の交流をより深めたいと考え、8班に分かれて討論してもらうことにしました。

その狙いについて、日本高校野球連盟の井本亘事務局長は「それぞれの主将が自身の考えを、自信を持って述べてほしいと考えました。テーマは、土屋先生とも相談し、身近で発言しやすい内容として『高校野球で身につけた心・技・体』としました。自分自身を掘り下げ、気付きを得られる機会になることを期待します」としています。

模造紙に付箋紙を貼り付けながら討論する主将たち

ファシリテーターの土屋さんは、公認心理師として大阪体育大の学生相談室でスポーツカウンセリングを担当するほか、スポーツメンタルトレーニング上級指導士として、プロ・スポーツチームや日本代表チームで心理支援を担当。2024年のパリ五輪ではウェルフェアオフィサーとして日本選手団に帯同し、実力発揮支援や誹謗中傷対策に携わりました。2025年9月からは日本スポーツ心理学会会長を務めています。

ファシリテーターの土屋裕睦さん(右)と司会の大村浩士さん

今回のキャプテントークは、毎日放送アナウンサーの大村浩士さんが司会を担当。土屋さんは「高校野球でどのような経験をし、教訓や気付きを得たのか、キャプテン同士で分かち合う良い機会にしてください」と呼びかけました。

主将たちは4人ずつ同じテーブルを囲み、自分の名前・校名に加え、「高身長を生かしたプレー」「守備力」「広角打法」「コンタクト率」……といったアピールポイントを用意されたプレートに書き、最初に各班で90秒間ずつの自己紹介をしました。そして、①進行役 ②書記係 ③タイムキーパー ④発表者――を決め、討論を始めました。

4人ずつの班のなかで自己紹介をする主将たち
4人1組に分かれて討論

各テーブルに置かれた大判の模造紙には、『心』『技』『体』の枠が設けられ、4人がそれぞれ自分の色が決められた付箋紙(ふせんし)に、思いついた言葉やフレーズ、意見を書き込んでその内容を声に出しながら、模造紙の枠内に貼り付けていきました。

『心』では、「部員は運命共同体である」「声の掛け合い」「飽きずに鍛錬」「心から野球をする」「感謝の気持ち」「礼儀」「人間力」……

『技』では、「スイングスピード」「投球パターンの確率」「野球IQ」「変化球の質」「ストライク率」「打席内での考え方」……

『体』では、「雪かきでの足腰強化」「綱のぼり」「終盤でも全力で戦う体力」「ケガの防止」「柔軟性」「初動負荷」……

グループ討論が行われている間、土屋さんと大村さんが各班を回り、付箋紙に書かれた言葉やフレーズの意味について、質問を投げかけました。

主将らに質問するファシリテーターの土屋裕睦さん(右)と司会の大村浩士さん

また、土屋さんのもとでスポーツ心理学を学んだことのある渋谷愛佳さん(大阪体育大の学生相談室勤務)ら3人がアシスタントを務めました。3人も各班を巡回し、グループ討論の進め方についてアドバイスしました。

そのアドバイスを受けた5班(日本文理・渡部倖成、帝京・池田大和、高川学園・衞藤諒大、熊本工・井藤啓稀の皆さん)では、『心』の枠に付箋紙を貼った17の言葉やフレーズを5つに分類し、付箋紙を貼り直してグルーピングしました。さらに、それらを一くくりにする新たな言葉も考えました。

『メンタル』 「メンタルの強さ」「自分を信じる力」「執念」「集中力」
『観察』 「周りを見る力」「気付き」
『人として』 「人間性」「マナー」「共に戦う仲間に感謝」「環境に感謝」「人のことを考えること」
『生活』 「私生活」「生活」「日頃の生活の大切さ」
『The 心』 「目標、目的」「向上心」「モチベーション」

このように言葉やフレーズを整理し直すことで、

ほかのメンバーと自分の考え方の共通点、違いがはっきりする。
討論内容を発表する際、要点を絞ったり、分かりやすい言葉に言い換えたりできる。

といったメリットがあると、土屋さんは話します。

各班の討論内容を発表

約1時間にわたりグループ討論を行い、最後に班ごとに討論内容を発表し、32人全員が選抜大会に向けた目標を述べました。

5班の発表を担当した日本文理の渡部さんは、『心』を五つにくくり直したことを紹介し、「野球をやる以前に、人として、しっかりと心を整えることが大事だ」と話しました。そして、5つの分類のどれにも当てはめられなかった「横綱を目指さなければ十両にもなれぬ」について、「高校野球に例えると、全国制覇を目指さなければ、甲子園出場すらできない、という意味だと思います」と説明しました。

グループ討論の内容を発表する主将たち

また、『体』に挙げた「鎖骨から呼吸」に対しては「どういう意味か」と質問され、渡部さんは「トレーニングで息が上がってしまったときなど、しっかり深呼吸することで、次の良いパフォーマンスにつながる。肺は鎖骨付近まであり、大きく肺を膨らますことが大事です」と説明しました。土屋さんは「『鎖骨で呼吸』という表現は興味深い。意識付けしたいとき、メンタルをどうこうするというよりも、体に働きかけるほうが心落ち着くものです。呼吸に注目したのは、なるほどと思いました」

グループ討論の内容を発表する主将

土屋さんは、この日のグループ討論で出された言葉やフレーズを「ワードクラウド」(頻繁に出現した語を大きく、そうでない語を小さく表示するもの)にし、プロジェクターに映し出しました。

「多くの皆さんが『感謝の気持ち』をもってプレーしていることがよく分かりました。『技』では『堅実な守備』『機動力』、『体』では『持久力』『体調管理』など。これまでならってきたこと、経験してきたことを一つ一つ言葉にし、お互いに共有することができました。選抜大会に向けても大きな自信にもなったのではないでしょうか」と話しました。

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