お知らせ

審判委員

「指名打者」が消滅する五つのケースを知っていますか?

審判委員と学ぶ高校野球特別規則③

2026年1月の日本高野連理事会で、高校野球特別規則に「指名打者を採用する」と明記することが決まり、今季から高校野球でも指名打者(公認野球規則5.11)が導入されることになりました。

2026年のシーズンがまもなく始まります。指名打者(DH)ルールについて、選手、指導者の皆さんの理解は進んでいるでしょうか。

新たな活躍の機会を創出

指名打者ルールは、よりスリリングな試合展開を目指し、1973年に米メジャーリーグ(MLB)のアメリカン・リーグで導入されました。投手が打席に立つと試合の流れが停滞するとして、選手の専門性の向上が求められたためです。もう一つのナショナル・リーグでは投手が打席に立つスタイルが続いていましたが、2022年にナショナル・リーグも含めたMLB全体で正式に指名打者が採用されることになりました。

日本ではプロ野球のパ・リーグが1975年に導入し、社会人野球も88年から続きました。今シーズンから東京六大学野球連盟、関西学生野球連盟で導入され、27年からプロ野球のセ・リーグでも採用されます。

台湾での指名打者の様子。12月末の日台高校野球国際親善試合では指名打者制で行われた。

ここで、高校野球で指名打者制を採用した目的について、改めて触れておきましょう。

1.
部員数が減少する中、部員の新たな活躍の機会を創出する
2.
投手の健康(特に熱中症)対策の推進
3.
大学を含む学生野球全体としての流れ

これまで走塁や守備が不得手などの理由で出場機会に恵まれなかった選手が、指名打者として試合に出場し、練習を重ねてきた得意の打撃を生かせる機会が生まれるのも重要なポイントです。

交代により「指名打者」が消滅することも

これまで指名打者ルールを採用してきたMLBや日本のプロ野球、社会人野球などでは、投手と野手の分業が進んでおり、投手が他の守備位置についたり、野手が投手になったりする場面はほとんど想定されていません。選手の層も厚く、打撃専門選手の起用することで、投手の負担軽減につながっています。

一方、高校野球では、チーム事情はさまざまです。複数のポジションを担う選手も少なくなく、プロ野球などとは状況が大きく異なります。そのため、交代により指名打者の役割が消滅するケースが出てくることが予想されます。制度導入当初にまず理解しておきたいのは、「指名打者が消滅する五つのケース」です。

指名打者が消滅する五つのケース
1. 投手が他の守備についた場合 5.11(a)(8)
2. 代打者または代走者が試合に出て、
そのまま投手になった場合
5.11(a)(9)
3. 投手が指名打者の代打者
または代走者になった場合
5.11(a)(10)
4. 指名打者が守備についた場合 5.11(a)(12)
5. 他の守備位置についていた
プレーヤーが投手になった場合
5.11(a)(14)

いわゆる「大谷ルール」と呼ばれる規則5.11(b)は、指名打者ルールにおいて、投打ともにすぐれている選手を最大限活用できるよう整備されました。

従来の指名打者ルールでは、投手が打席に入る場合、指名打者は放棄され、試合中に投手を交代すれば、打順の入れ替えも必要になるなど、戦術上の制約がありました。しかし、規則5.11(b)が追加されたことにより、先発投手が打席にも入る場合、「投手」と「指名打者」という別々の2人として考えることができるようになりました。つまり、投手として降板した後も、「指名打者」として出場し続けることができます。

高校野球では、エースが主力打者というチームも多く、プロ野球以上にこの規則5.11(b)が適用されるでしょう。このルールについても、交代にともなって様々なケースが想定されます。

指名打者の消滅や、規則5.11(b)に関連するケースについて、 当サイトでも詳しく説明していますので、選手や指導者のみなさんはぜひ確認して、理解を深めてください。

制度を理解し、スムーズな運用を

交代などベンチの意向は、選手が球審に伝えます。教育的な観点から見れば、コミュニケーションの重要な一面となります。

球審は選手交代の通告を受けると、場内放送の担当者にその内容を伝えます。その際、

1.
退く選手を確認
2.
その後に新たに入る選手や守備位置の変更
という順序で整理して伝えることを心がけています。

プロ野球の球場で長年、放送業務に携わってきた方によると、「指名打者が関係する交代は、最初に『DHが消滅します』など前置きがあると非常に助かる」ということでした。

選手が審判に伝える場面や、指導者が選手に指示を出す場面でも同様で、『DHが消滅します』という一言が、誤った運用を防ぐには有効です。こうした積み重ねこそ、高校野球における教育的価値を体現する場面ではないでしょうか。

指名打者ルールの導入は、高校野球の戦術面だけでなく、教育や選手保護の観点からも大きな意味を持ちます。制度を正しく理解し、落ち着いて運用することが、試合の円滑な進行と選手の安全につながります。

当初は不慣れによって時間がかかることも予想されますが、現場での経験を積み重ねながら、間違いのない運用に向けて、関係者全員で取り組んでいきましょう。

バックナンバー